『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と鉄』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
「鉄」という重金属は、生命体にとっては非常に便利な物質ですが、その一方で非常に危険な物質でもあります。
鉄は、糖のエネルギー代謝の本質である電子のフローを担うことができるのですが、その一方で、プーファ(多価不飽和脂肪酸)の存在下や免疫抑制状態では生命体を崩壊させてしまいます(鉄過剰そのものでも免疫抑制状態を引き起こす)。
鉄は排出も困難なため、取り扱いが非常に難しいのです(基礎医学『鉄総集編』参)。
さて、私たちだけでなくバクテリアを含めた微生物も鉄を生存のために使用しています。
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主体であるバクテリア感染では、私たちの細胞とバクテリアの間で鉄の激しい争奪戦が起こります(^_−)−☆。
B型、C型肝炎ウイルス(hepatitis B virus (HBV) or hepatitis C virus (HCV))やエイズウイルス(human immunodeficiency virus (HIV))などのウイルス(実際は存在しない)においても、鉄が感染および増殖に必須の物質であることが報告されています(Front Biosci (Landmark Ed), 25, 893-911 2020 Jan 1)。
しかし、本来は鉄によって増殖が加速される微生物の代表は、やはりバクテリア(細菌)です。バクテリアは、私たちの鉄を格納するヘモグロビンを奪うことが知られています(J Mol Biol. 2016 Aug 28; 428(17): 3408–3428)(Met Ions Life Sci, 12, 279-332 2013)。
これによって、赤血球のヘモグロビンが減少して、酸素を細胞(ミトコンドリア)に運ぶことができなくなります。
最新の研究でも、結核菌がヘモグロビンを利用して低酸素を引き起こすことが報告されています(Nature Communications volume 10, Article number: 4260 (2019))。
結核感染で貧血が起こるのも、結核菌がヘモグロビンを取り込んでしまうからです。
その他、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主犯格である結核菌の親戚であるバクテリアでも、私たちの赤血球内に感染して、ヘモグロビンと酸素の結合をブロックすることが報告されています
(Folia Microbiol (Praha), 65 (2), 417-421 Apr 2020)。
結核菌は今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と深く関係しています。
その他、鉄の存在によって、血液中などの休眠バクテリアが活性化して、エンドトキシンを放出するメカニズムも拙著で詳しくお伝えしました(『慢性病は現代食から』)。
エンドトキシンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症例で見られる敗血症の原因です(オンライン講義 参照)。
薬剤耐性のバクテリアや抗生剤の届かないバイオフィルム形成に対しても、鉄のキレーション療法が有効なことが報告されています(Antimicrob Agents Chemother. 2020 Mar; 64(3): e02353-19)(Front Microbiol. 2018; 9: 1811)(Hemoglobin, 34 (3), 227-39 Jun 2010)(Antimicrob Agents Chemother. 2012 Oct; 56(10): 5419–5421)。
したがって、感染症では鉄をいかに排除していくかが重症化を防ぐ重要なポイントとなります。
日常生活で、鉄過剰(鉄剤、鉄サプリ、鉄強化食品、鉄鍋など)になっていないかをチェックしてみましょう。