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Dr.HIRO

『悪質な「糖悪玉説」を撃退する3〜リアルサイエンスシリーズ』

 

 

 

心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。

 

 

 

「糖悪玉説」を印象づける2016年の元論文(参考文献1)には、資金提供先が記載されています。

 

 

 

 

それを見ると、記事で警鐘がなされている「利益相反(お金をもらって資金提供者の都合のよい記事を書くこと)」はない論文に見えます。

 

 

 

ところが、ハーバード医学部の図書館(元論文の資料のソース)までの旅行代金をある人物に支給してもらった事実を後日になって追加しているのです(Error in Acknowledgments. JAMA Intern Med. 2016 Nov 1;176(11):1729)。

 

 

 

 

 

なぜこの利益相反につながる事実を公開した最初の論文に書かなかったのでしょうか?

 

 

 

それは、この資金を提供した人物が、「ゲアリー・タウブス(Gary Taubes))だったからです。

 

 

 

 

 

 

ゲアリー・タウブスは、「砂糖悪玉説」でベストセラーの一般健康ポップカルチャー本を書いているジャーナリストです。

 

 

 

 

 

 

つまり、この元論文は、甘味料ビジネスが利益相反をしていると批判していますが、自らが利益相反(タウブスに資金提供してもらって、彼の糖悪玉説に有利な事柄を書くこと)を犯しているのです。

 

 

 

 

日本で「糖悪玉説」や糖質制限を無責任に垂れ流しているのは、このタウブス、ユドキン、アトキンズ、ロバート・ラスティグ(果糖悪玉説の主犯)らの健康本に影響を受けている人たちです。

 

 

 

 

タウブスは、「インシュリン肥満説(Insulin Obesity Hypothesis、Carbohydrate/Insulin Obesity Hypothesis)」なる仮説を自分の信念にして、それを証明するためにクラウドファンドで研究資金を集めました。そして、栄養学イニシアチヴ(Nutrition Science Initiative (NuSI))なる団体を立ち上げています。

 

 

 

 

 

 

彼の「インシュリン肥満説」とは、炭水化物がインシュリンを分泌させることで肥満になるという現代医学の生理学の本にさえ記述されていない奇妙奇天烈な発想でした(The science of obesity: what do we really know about what makes us fat? BMJ 2013;346:f1050)。

 

 

 

彼のベストセラーになった本および論文では、要約すると

 

・近代の肥満やガンは炭水化物が原因である

・低脂肪食で太る(高脂肪食で痩せる)

・糖質制限食(アトキンズダイエット)で痩せる

・カロリー過多で太る訳でなく、カロリーが少ないから痩せる訳でもない

 

というものです。

 

 

 

 

さて、タウブスが自らの仮説を証明すべく、資金を出して行った臨床試験の結果を見ていきましょう。

 

 

 

 

肥満あるいは過体重の17人を対象に、4週間高炭水化物食を摂取してもらいました。その後、4週間は高脂肪食(ケトン食)を摂取してもらい、体重やエネルギー消費量などを測定しています(高炭水化物食もケトン食も同じ総カロリーに設定)(Energy expenditure and body composition changes after an isocaloric ketogenic diet in overweight and obese men. Am J Clin Nutr 2016;104:324–33)。

 

 

 

 

 

その結果、高脂肪食に変えても、体重の変化やエネルギー消費に有意な差は出ませんでした。これは、同じカロリーであれば体重変化は短期間では出現しないことを意味しています。

 

 

 

「高炭水化物で太る、高脂肪食で痩せる」と主張しているタウブスの仮説は、皮肉にも自ら資金を提供した臨床試験で否定されています。

 

 

 

この臨床試験では、高脂肪食(ケトン食)によって筋肉量が減り、糖のエネルギー代謝の指標である「呼吸商(RQ)」も低下しています。呼吸商(RQ)は、エネルギーを産生する効率と考えてもらってよいです。

 

 

 

 

もう一つのタウブスが資金提供した臨床試験は、臨床試験ではエビデンスレベルが最も高い(信頼性が高い)とされる「ランダム化比較試験(RCT)」です。609人の過体重の人を対象に、糖質制限および低脂肪食に振り分けて1年間後の体重変化やインシュリン値を調べています(Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion. JAMA. 2018 Feb 20; 319(7): 667–679)。

 

 

 

 

 

糖質制限は炭水化物を1日20gカット、そして低脂肪食も脂肪を1日20gカットしたものです。

 

 

 

その結果、糖質制限および低脂肪食との間に、体重減少の有意な差は認められませんでした。

 

 

 

また、両タイプの食事によるインシュリン分泌量と体重変化の間にも関連性は認められませんでした。

 

 

 

タウブスのインシュリンによる肥満説が見事に否定されています。また彼が主張しているように低脂肪食で太るのではなく、逆に痩せます。

 

 

 

 

 

 

この結果も、タウブスの期待を裏切った結果に終わっています(彼は自分の栄養学イニシアチヴ(NuSI)のサイトにこの結果をすぐに掲載しなかった)。

 

 

 

 

すでに2010年の健康人を対象とした2年間のランダム化比較試験(RCT)では、低脂肪でも糖質制限でも、体重減少効果は同じだったという結果が出ています(Weight and Metabolic Outcomes After 2 Years on a Low-Carbohydrate Versus Low-Fat Diet. Ann Intern Med. 2010 Aug 3; 153(3): 147–157)。

 

 

 

 

さらに、タウブスと契約を結んでいた研究者(Kevin D. Hall)が行った他の臨床試験では、体脂肪は、糖質制限よりも低脂肪食で有意に減少した結果が示されています(Calorie for Calorie, Dietary Fat Restriction Results in More Body Fat Loss than Carbohydrate Restriction in People with Obesity. Cell Metab. 2015 Sep 1;22(3):427-36)。

 

 

 

 

タウブスは低脂肪で太り、糖質制限で痩せると主張していますが、エビデンスはそれを真っ向から否定しています。

 

 

 

 

糖質制限すると、緊急処置として、まず体内の脂肪を分解(lipolysis)して、エネルギー源(fat oxidation)にあてます。一見、体内の脂肪が分解されるので、痩せるのではないかとほとんどの方が勘違いします。

 

 

 

しかし、同じカロリーかつタンパク質量で、糖質制限と高炭水化物食を比較すると、糖質制限はインシュリンの分泌が低下するにも関わらず、実際は高炭水化物食よりも体脂肪の減少は少ないという臨床結果が出ているのです(A review of the carbohydrate-insulin model of obesity. Eur J Clin Nutr. 2017 Mar;71(3):323-326.)。

 

 

 

 

糖質制限では、脂肪摂取量が増えるため、体脂肪分解による減少を相殺することが一つの理由です。

 

 

 

もう一つの理由は、糖質制限によって現代人の体脂肪を分解するとプーファが遊離して、血液中に溢れることと関係しています。そのプーファは基礎代謝(糖のエネルギー代謝、甲状腺機能)を落とすので、脂肪の肝臓でのデトックスが止まるからです。

 

 

 

 

ちなみに、糖質制限で脂肪をエネルギー源にしてしまう(メタボリック・スイッチ)と、エネルギー産生所であるミトコンドリアが死滅していくので、長期的にガンを含めあらゆる慢性病を発症する危険性が高まることにも留意しなければなりません(拙著『慢性病の原因はメタボリック・スイッチにあった!』参照)。

 

 

 

 

インシュリン値が肥満の原因であるなら、インシュリン分泌量が高いグリセミック・インデックス(GI)食と低いグリセミック・インデックス(GI)食を比較試験をすれば、その仮説が証明できるはずです。

 

 

 

 

高グリセミック・インデックス(GI)食は、たくさんインシュリンが分泌されるので、タウブスの仮説が正しいならば、肥満になるはずです。

 

 

 

逆に、低グリセミック・インデックス(GI)食は、インシュリン分泌量が少ないので、痩せることになります。

 

 

 

2023年のメタ解析では、高グリセミック・インデックス(GI)食と低グリセミック・インデックス(GI)食の比較臨床試験で、体重および脂肪量の変化に有意な差がない結果が出ています(Low glycaemic index or low glycaemic load diets for people with overweight or obesity. Cochrane Database Syst Rev. 2023 Jun 22;6(6):CD005105)。

 

 

 

インシュリン分泌が多くても少なくても、体重や体脂肪の変化が同じだったということは、インシュリンは肥満の原因とは言えないということになります。

 

 

 

 

前々回にもお伝えしたように、糖質で中性脂肪に変換されるのは、1日500g以上の摂取を超えたときです。これがわたしたちの日常生活では不可能な量です。

 

 

 

以上から、エビデンスは、糖質やインシュリン値が上昇することで脂肪が体内に蓄積するのではないことを示しています。

 

 

 

 

それよりも高脂肪食の摂取によって体脂肪がつくのです(Effects of an oral and intravenous fat load on adipose tissue and forearm lipid metabolism. Am J Physiol. 1999;276(2 Pt 1):E241–8)(Peripheral fat metabolism during infusion of an exogenous triacylglycerol emulsion. Int J Obes. 1998;22(8):806–12)(The role of dietary fat in obesity. Int J Obes Relat Metab Disord. 1997 Jun;21 Suppl 3:S2-11)(Elevated Fat Intake Increases Body Weight and the Risk of Overweight and Obesity among Chinese Adults: 1991-2015 Trends. Elevated Fat Intake Increases Body Weight and the Risk of Overweight and Obesity among Chinese Adults: 1991-2015 Trends)(Short-term high-fat diet consumption increases body weight and body adiposity and alters brain stem taste information processing in rats. Short-term high-fat diet consumption increases body weight and body adiposity and alters brain stem taste information processing in rats)。

 

 

 

 

 

2020年のランダム化臨床試験のメタ解析研究では、高炭水化物(55–60%)と糖質制限(糖質10%以下、アトキンズダイエット)の比較が報告されています。

 

 

 

 

1年後の平均体重減少効果は、高炭化物食が糖質制限よりも有意に高い結果が出ています(Comparison of dietary macronutrient patterns of 14 popular named dietary programmes for weight and cardiovascular risk factor reduction in adults: systematic review and network meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2020;369:m696)。

 

 

 

1年後には、糖質制限よりも高炭水化物の方が痩せるのです。

 

 

 

 

炭水化物の摂取が肥満の原因であるというユドキン、アトキンズやタウブスの主張は、確かな根拠のない“信念”になっています。

 

 

 

 

 

そして、激しく糖悪玉説を否定するものを排斥する彼らの言動を見ると、彼らの信念はもはや“宗教”と化しているといって過言ではないでしょう。

 

 

 

 

 

ファクトやエビデンスなどの自然の摂理では議論できないので、人格攻撃(この元論文では甘味料ビジネス叩き)に頼るしかないのは、手にとるようにわかります。

 

 

 

 

 

 

今回、タウブスらの「糖悪玉説」や糖質制限のゴリゴリの主張に対して、私がご紹介したエビデンスは臨床試験を中心としたほんの一握りです。

 

 

 

そのほかにも、今回の臨床試験の結果を裏付ける動物実験などの基礎研究がたくさんあります。

 

 

 

タウブスの場合、一つだけ私が認めている部分があります。

 

 

 

それは、脂質に関しては、彼はプーファが健康被害を与えるのであって、飽和脂肪酸(アンセル・キーズが主犯)ではないとしている点です。

 

 

 

 

タウブスが資金をかき集めて設立した栄養学イニシアチヴ(Nutrition Science Initiative (NuSI))なる団体は雲散霧消(うんさんむしょう)し、現在はWEBサイトにアクセスすらできなくなっています。

 

 

 

 

しかし、彼は豊富なエビデンスを無視し、いまだに「インシュリン肥満説」なる砂糖悪玉説に固執しています。

 

 

 

 

私はタウブス、ユドキンのような信念だけに固執して、ファクトやエビデンスを無視する自然の摂理に背くタイプの人間(支配型、操作型)をたくさん見てきています。

 

 

 

 

 

 

彼らは、非常に口がうまく、大衆を誤誘導して、資金を調達する能力に長けています。その頂点は、歴史上最大のネズミ講事件を引き起こしたバーナード・マドフ(Bernard Lawrence Madoff)です。

 

 

 

 

 

タウブスを調べていて私が感じたのは、このマドフと同じものでした。

 

 

 

日本でもSNSで声の大きい輩(中には♨️権力者の走狗も存在する)には、このタイプが比較的多いです。

 

 

 

 

 

彼らは、信念と自分が同一化しているので、信念を曲げることは、自分がなくなることと勘違いしています。

 

 

 

 

彼らは、腹の底では分かっていても、いまさら「砂糖は悪くない」とは口が裂けても言えないのです。

 

 

 

ただし、日本人の場合は信念よりも自分のプライドや金儲けに重点がある“利己的”かつ“近視眼的”な人が多い印象があります(タウブスとは違う支配型タイプ)。

 

 

 

 

私が数々のエビデンスを提示すると、「自分の商売があがったりになる」というヒトたちです。

 

 

 

 

日本のこのタイプの人間は、エビデンスを捻じ曲げたり、無視したりするタウブスよりもタチが悪く、人格攻撃しかできないケースが多いですが、タウブスタイプもかなり存在しています。

 

 

 

 

これらの大衆を誤誘導させる邪悪(自然の摂理に背く)で品位の低い人たちには、ファクト、エビデンスだけで撃退させるに十分ですが、みなさんも同じような傾向(支配、操作、利己的傾向)のある煽動者に足をすくわれないようにご留意してください (^_−)−☆。

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