『蚊取り線香の臭いで気分が悪くなる理由〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
蚊取り線香は日本の夏の風物詩にもなっています。
私はこの煙が大の苦手で、臭いで気分が悪くなります。
ベープマットも同じく不快な臭いがします。
ベープマットや蚊取り線香の煙が充満した部屋では、私たちだけでなく、ワンちゃんもぐったりします(ペットの蚊除けスプレーにも含まれている)。
蚊取り線香やベープマットの主成分を調べると、「ピレスロイド系殺虫剤(pyrethroid)」とあります。
この殺虫剤は、除虫菊の成分ピレトリン(pyrethrin、パイリースリン)を化学合成したもので、猛毒の塩素を含んでいます。
この人工合成殺虫剤は、虫の神経系にダメージを与えるだけで、ヒトにはほとんど影響を与えないとありますが、本当でしょうか?
最新の疫学的調査でこの蚊取り線香や殺虫・防虫剤(スプレーの殺虫剤の臭いも気分が悪くなる)に含まれるピレスロイド系殺虫剤の暴露量と関節リウマチのリスク増加に相関関係があることが報告されました(Exploratory analysis of the association between pyrethroid exposure and rheumatoid arthritis among US adults: 2007–2014 data analysis from the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES). Environ Sci Pollut Res Int. 2022 Sep 24. doi: 10.1007/s11356-022-23145-y)。
関節リウマチは、エストロゲン過剰などによる甲状腺機能低下で引き起こされることを拙著『新・免疫革命』や基礎医学講座でお伝えしてきました。
実際に、このピレスロイド系殺虫剤そのもの、およびその代謝産物のいずれもが、エストロゲン作用を持つことがすでに報告されています(Estrogenicity of pyrethroid insecticide metabolites. Environ Monit. 2006 Jan;8(1):197-202)(Estrogenic activities of two synthetic pyrethroids and their metabolites. J Environ Sci (China). 2010;22(2):290-6)。
ピレスロイド系殺虫剤に暴露した稚魚は、甲状腺障害を起こし、過剰な炎症体質になります(Early life exposure of zebrafish (Danio rerio) to synthetic pyrethroids and their metabolites: a comparison of phenotypic and behavioral indicators and gene expression involved in the HPT axis and innate immune system. Environ Sci Pollut Res Int. 2018 May;25(13):12992-13003)。
ヒトにおいても、ピレスロイド系殺虫剤のエストロフゲン作用によって、関節リウマチ以外にも、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの脳・神経疾患や白血病などのリスク増加が報告されています(Prenatal exposure to pyrethroid pesticides and childhood behavior and executive functioning. Neurotoxicology 62, 231–238 (2017))(Urinary metabolites of organophosphate and pyrethroid pesticides and behavioral problems in Canadian children. Environmental Health Perspectives (Online) 121, 1378 (2013))(Maternal urinary concentrations of pyrethroid and chlorpyrifos metabolites and attention deficit hyperactivity disorder (ADHD) symptoms in 2–4-year-old children from the Odense Child Cohort. Environmental research, 108533 (2019))(Motor neuron disorder simulating ALS induced by chronic inhalation of pyrethroid insecticides. Neurology 67, 1894–1895 (2006))(Protective glove use and hygiene habits modify the associations of specific pesticides with Parkinson’s disease. Environment international 75, 144–150 (2015))(Pyrethroid pesticide exposure and risk of childhood acute lymphocytic leukemia in Shanghai. Environmental science & technology 46, 13480–13487 (2012))(Leukemia, In utero pesticide exposure and leukemia in Brazilian children< 2 years of age. Environmental health perspectives 121, 269–275 (2012)。
このような毒性が、蚊取り線香の臭いの嫌悪感となっていることが分かります。
生命体を殺傷するのに「ヒトには安全な薬剤」という謳い文句は、様々な公害病で私たちの先祖を苦しめてきたという真実の歴史に目を背けてはいけません。
現代社会では、生命の仕組みを無視して、金儲けや人口削減に目がくらんだ妄想が、世の中の“権威”や“常識”として居座っているのです(^_−)−☆。