『認知症の原因になるホルモンとは?〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
今まで議論になってきたあるホルモンが認知症という脳の糖のエネルギー代謝低下による原因になっているという傍証となる研究結果が発表されました。
このホルモンは、あらゆる疾患に効果があるとされ、記憶力などの脳機能をアップさせる効果まであると現代医学による喧伝が忙しかったものです。
そのホルモンとは、環境ホルモンとも呼称されている「エストロゲン」です。
エストロゲンは男性においても、ストレスホルモンとして体内で産生されていますので、決して「女性ホルモン」ではありません。
さて、エストロゲンは、記憶力を高めるどころか、記憶をむしろ失くす作用があることが近年指摘されるようになりました(Impact of exogenous estradiol on task-based and resting-state neural signature during and after fear extinction in healthy women. Neuropsychopharmacology. 2021 Dec; 46(13): 2278–2287)。
エストロゲンは、脳神経細胞の糖のエネルギー代謝をブロックして、情報伝達(whole-brain functional connectivity)をブロックするからです。
そして、最新のデンマークの大規模の疫学的調査において、55歳以下の女性への短期間のエストロゲン投与でも、認知症のリスク上昇との相関関係を認めました(Menopausal hormone therapy and dementia: nationwide, nested case-control study. BMJ. 2023 Jun 28;381:e072770)。
ちなみに、長期のエストロゲン投与による認知症リスク上昇との相関関係は、過去の研究同様に認められています。
この更年期の女性に対するホルモン療法では、「エストロゲン+プロゲスチン」という合剤を与えています。
ところが、プロゲスチン単独投与と認知症リスク上昇に関連が認められなかった結果が出ています。
つまり、更年期障害に対するホルモン療法のエストロゲンが認知症リスク上昇と関連していることになります。
動物実験では、エストロゲン合成をブロックすることで、記憶障害が起こらなくなった結果がすでに報告されています(Pharmacological blockade of the aromatase enzyme, but not the androgen receptor, reverses androstenedione-induced cognitive impairments in young surgically menopausal rats. Steroids. 2015 Jul; 99(0 0): 16–25)。
現代社会では、私たちは超過剰エストロゲン暴露にあっています。
現代人は、糖のエネルギー代謝という基本原理を知らない限り、エストロゲン過剰によるガンや心臓・脳血管障害発症を免れたとしても、若くして認知症になることは間違いないでしょう。