『“朝食抜き”が不調の原因になる理由〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
多忙な生活を送っていると、食習慣が糖尿病やガンなどの遠因になっていることになかなか気づくことがありません。
特に「早食い」や「朝食抜き(間欠的断食)」が2型糖尿病のリスクと相関関係にあることが最新の疫学的調査で報告されています(Eating behaviors and incidence of type 2 diabetes in Japanese people: The population-based Panasonic cohort study 15. J Diabetes Investig. 2024 Apr 2. doi: 10.1111/jdi.14207)。
朝食抜きなどの間欠的な断食は、細胞のインシュリン感受性(細胞のインシュリンを受け取るアンテナ)を低下させて、高血糖を招くことが分かっています(Intermittent fasting reduces body fat but exacerbates hepatic insulin resistance in young rats regardless of high protein and fat diets. J Nutr Biochem. 2017 Feb:40:14-22.)(Eating frequency is inversely associated with blood pressure and hypertension in Korean adults: Analysis of the Third Korean National Health and Nutrition Examination Survey. Eur. J. Clin. Nutr. 2014;68:481–489.)。
インシュリンは、細胞内にブドウ糖を運ぶ作用をもつホルモンです。
2型糖尿病に認められる、細胞内にブドウ糖を取り込むインシュリンのアンテナの異常(インシュリン抵抗性)が起こることで、血液中に細胞に取り込まれなかったブドウ糖が溢れかえります(高血糖)。
これは、朝食を抜くような低血糖状態(間欠的断食状態)では、ストレスホルモンのコルチゾールが上昇するからです(Effect of the one-day fasting on cortisol and DHEA daily rhythm regarding sex, chronotype, and age among obese adults. Front Nutr. 2023; 10: 1078508)(Effects of Intermittent Fasting on the Circulating Levels and Circadian Rhythms of Hormones. Endocrinol Metab (Seoul). 2021 Aug; 36(4): 745–756)。
コルチゾールは、みなさんの脂肪に蓄積しているプーファを血液中に放出し、溢れかえさせるストレスホルモンです(リポリシスと呼ぶ)。
このとき、血液中のプーファが細胞のインシュリンに対するアンテナの感受性をブロックします。
つまり、血液中のプーファが過剰になると、細胞のインシュリンのアンテナがおかしくなることで血液中のブドウ糖を取り込めなくなり、高血糖になるのです。
近年では、その原因として、プーファの過酸化脂質が細胞のインシュリンに対するアンテナを鈍らせることが報告されるようになっています(The role of oxidized lipid species in insulin resistance and NASH in children. Front Endocrinol (Lausanne). 2022; 13: 1019204)(Insulin Resistance, Obesity and Lipotoxicity. Adv Exp Med Biol. 2017:960:277-304)(Lipid Peroxidation Linking Diabetes and Cancer: The Importance of 4-Hydroxynonenal. Antioxid Redox Signal. 2022 Dec;37(16-18):1222-1233)(Skeletal muscle lipid peroxidation and insulin resistance in humans. J Clin Endocrinol Metab. 2012 Jul;97(7):E1182-6.)。
またプーファの代謝産物も細胞のインシュリンのアンテナ異常と関連していることも報告されています(Increased Serum Dihomo-γ-linolenic Acid Levels Are Associated with Obesity, Body Fat Accumulation, and Insulin Resistance in Japanese Patients with Type 2 Diabetes. Intern Med. 2018 Oct 15;57)。
特に、朝方はもっとも低血糖になっている時間帯で、ストレスもマックスです。
朝食で血糖値をあげておかないと、私たちの筋肉や脂肪が溶かされていきます(そしてプーファなどの毒性物質が血液中に放出される)。
このように、朝食を抜くと、
⭐️低血糖→ストレスホルモン分泌→プーファが血液中の放出→細胞のインシュリンのアンテナ異常→細胞内にブドウ糖を取り込めない→高血糖→糖尿病
となっていきます。
この状態では、脂肪をエネルギー源にせざるを得ないので、糖尿病だけでなく、癌などあらゆる慢性病の下地を作ることになります。
朝食はしっかりと摂ることに越したことはありませんが、少なくとも血糖値を上げておくことは、私たちの心身の健康の秘訣となります(^_−)−☆。