『更年期障害はエストロゲン欠乏ではない!〜リアルサイエンスシリーズ』

心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
更年期を迎えた女性たちは、生理が終わった安心感も束の間、次々と襲いかかる身体的・精神的な不調に悩まされています。
最近では、中年男性にも同様の症状が見られることが増えています。
以下に挙げる症状に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
身体的症状
ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)
発汗(特に寝汗)
冷え
肩こり、腰痛、背中の痛み
疲労感(疲れやすさ)
めまい
動悸
頭痛
関節の痛み
しびれ
精神的症状
気分の落ち込み
イライラ
不安感
情緒不安定
意欲低下
不眠
婦人科関連症状
不正出血
おりものの異常
外陰部の痒み
その他の症状
排尿トラブル(尿失禁など)
胃腸の不調(胃痛、吐き気、食欲低下、下痢・便秘)
皮膚のかゆみや乾燥
手足の痺れ・震え
現代医学の誤解
現代医学はこれを「更年期障害」なる病名をつけ、よりによってその原因となる物質を治療薬として投与するという医原病(医療行為によって発生する障害)を産生し続けています。
その物質とは「エストロゲン」。
現代医学では「女性ホルモン」などというネーミングをつけていますが、これが一般の方だけでなく、医師たちの誤解を産む元凶になっています。
なぜなら現代社会においては、男性でも大量に日々産生されているホルモンだからです。
参考文献
Enhanced conversion of androstenedione to estrogens in obese males. J Clin Endocrinol Metab. 1980 Nov;51(5):1128-32.
本当は、エストロゲンはストレス時に放出されるストレスホルモンの一種です。
ストレスのときに放出されるコルチゾールというストレスホルモンは、エストロゲンを誘導します。そして、エストロゲンはコルチゾールの濃度を高める作用があります。
つまり、ストレス時にはコルチゾールとエストロゲンは同時に放出されて、互いを増強し合うということです。
参考文献
. Associations Between Natural Physiological and Supraphysiological Estradiol Levels and Stress Perception. Front Psychol. 2019 Jun 11:10:1296.
そして、セロトニンの分泌も高まります。
これだけエビデンスが揃っていても、エストロゲンをストレスホルモンという分類に入れることに、現代医学はかなりの抵抗を示しています。
なぜなら、現代医学は、更年期障害なる病名に対して、エストロゲンを投与するホルモン補充療法を推奨しているからです。
更年期以降のエストロゲン過剰の真実
更年期障害、つまり閉経した後は、実際は各組織においてエストロゲン産生が高まる結果、エストロゲン優位(エストロゲンドミナンス)という状態になっています。
閉経は卵巣でのエストロゲン産生が終了しただけであり、その他の脂肪組織、副腎、皮膚、乳房、子宮などの各組織ではエストロゲンの産生が高まります(卵巣から脂肪組織がエストロゲン産生のメイン工場になる)。
「ストロゲン優位」とは、エストロゲンの正反対の作用を持つプロゲンステロンというホルモンとの比において、エストロゲンが過剰になっている状態を呼びます。
参考文献
・Estrogen, Stress, and Depression: Cognitive and Biological Interactions. Annu Rev Clin Psychol. 2019 Feb 20;15:399–423.
・Endocrine Changes in Postmenopausal Women: A Comprehensive View/ Cureus. 2023 Dec 29;15(12):e51287.
・Estrogens in Adipose Tissue Physiology and Obesity-Related Dysfunction. Biomedicines. 2023 Feb 24;11(3):690.
・Adrenal Androgens and the Menopausal Transition. Obstet Gynecol Clin North Am. 2011 Sep;38(3):467–475.
・Estrogen synthesis and signaling pathways during ageing: from periphery to brain. Trends Mol Med. 2013 Jan 22;19(3):197–209.
・11-Oxygenated C19 Steroids Do Not Decline With Age in Women. J Clin Endocrinol Metab. 2019 Feb 8;104(7):2615–2622.
したがって、更年期障害は決してエストロゲン欠乏で起こる症状ではありません。
むしろエストロゲン過剰(正確にはエストロゲン優位)によって引き起こされている症状なのです。
次回はこのあたりを最新の研究をふまえて詳しく解説していきます。