『愛情ホルモンの真実〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
現代医学あるいは一般健康ポップカルチャーでは、“愛情ホルモン”とも呼ばれる「オキシトシン(バゾプレッシンン)」というタンパク質があります。
そして、なんとハッピーホルモンの一つとして、セロトニンと一緒にカテゴライズされています。
このナレーションを利用して、オキシトシンを医薬品として開発・乱用してきた経緯があります。
基礎医学では、このオキシトシンは、その正反対のストレスホルモンの一種であることをお伝えしてきました。
最新の研究では、この愛情ホルモンと呼ばれているホルモンが作用する部位をブロックした興味深い研究が報告されています。
今や食品だけでなく、生命体の遺伝子を改変するために使用される技術である「遺伝子編集(CRISPR-Cas9)」によって、ハムスターの愛情ホルモンの作用部位(he arginine–vasopressin V1a receptor)を取り除いた実験です(CRISPR-Cas9 editing of the arginine–vasopressin V1a receptor produces paradoxical changes in social behavior in Syrian hamsters. Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 May 10;119(19):e2121037119)。
この研究者は、この遺伝子編集を受けたハムスターは、オキシトシンが作用できないことで凶暴になると予測していました。
しかし・・・・・・
結果は、その真逆になったのです。
遺伝子編集を受けたハムスター(オキシトシンの作用がない)の方が、より他者とコミュニケーションの頻度が高くなったのです(オスとメスのハムスターの攻撃性の性差もなくなった)。
このようにオキシトシンが愛情ホルモンであるというナレーションは、徐々に崩壊しつつあります。
ただし、この研究は、「遺伝子編集」という技術そのものにまつわるものに問題点があります。
遺伝子編集では、ターゲット以外の部位でも作用を及ぼすため、一部の遺伝子を改変すると全体に問題が及びます(拙著『ウイルスは存在しない』下巻)。
単純にオキシトシンが愛情ホルモンでなければ、遺伝子編集が予測される結果が出るような信頼性のある技術でもないことは留意しておきましょう(^_−)−☆。