『大豆は主要なタンパク質源にはならない〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
人間には三大栄養素が必要とされています。
これは炭水化物、タンパク質、脂質です。
このうち、脂質は、炭水化物、とくに自然の甘味に含まれている果糖(フルクトース)から合成することができる(しかもプーファのように簡単に酸化しない良質な脂質)ので、実質的に必要なものは、炭水化物とタンパク質です。
日本では、主食の炭水化物は、米や芋類で確保できます。
問題はタンパク質です。
日本人は、大豆に対する愛着が深い民族です。
豆腐、枝豆、納豆、醤油、味噌など古来の知恵を生かした食品が食卓に並びます。
これらの多彩な食品は、欧米はもちろん、他のアジアやアフリカでも存在しません。
しかし、これらの大豆食品をタンパク質の摂取源とみなすのは間違いです。
生の大豆には、タンパク質分解をブロックする酵素も含まれているため、火を通すことでこの酵素をある程度失活することができます。
しかし、大豆のタンパク質は消化が難しい食物繊維に囲まれているため、たとえ火を通しても完全に消化できません。
大豆というのは、種子なので、動物に消化されては困るのです。
大豆を発酵させたり、豆が成熟する(硬くなる)前に刈り取ったり(枝豆)などの工夫によって、ある程度は消化しやすくなりますが、それでも十分量のタンパク質を確保できる訳ではありません。
サプリの大豆プロテインも動物性タンパク質と比較して、消化・吸収効率が低いため、十分なタンパク質源とはなりません(基礎医学『糖のエネルギー代謝とタンパク質』参照)。
そして、たとえ大豆を発酵させたりしても、大きな問題が残ります。
それは、植物性エストロゲン(イソフラボン)の残存です。
植物性エストロゲンは、ピルなどの合成エストロゲン(エストラジオール)と同じくエストロゲン作用をもっています(Comparison of the ligand binding specificity and transcript tissue distribution of estrogen receptors alpha and beta. Endocrinology. 1997 Mar; 138(3):863-70.)(Isoflavones: Estrogenic Activity, Biological Effect and Bioavailability. Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet. 2013;38:15–25.)。
植物性エストロゲンは、とくに低濃度で乳がん細胞やマウスの乳がんを増大させることが分かっています(Individual factors define the overall effects of dietary genistein exposure on breast cancer patients. Nutr. Res. 2019;67:1–16)(Soy diets containing varying amounts of genistein stimulate growth of estrogen-dependent (MCF-7) tumors in a dose-dependent manner. Cancer Res. 2001;61:5045–5050.)。
さらに、大豆の植物性エストロゲンは、甲状腺ホルモンの産生をブロックし(goitrogen)、糖のエネルギー代謝を低下させます(The Use of Soy Isoflavones in the Treatment of Prostate Cancer: A Focus on the Cellular Effects.Nutrients 2023, 15(23), 4856)(Current Perspectives on the Beneficial Effects of Soybean Isoflavones and Their Metabolites for Humans. Antioxidants 2021, 10(7), 1064)。
醤油や味噌などの大豆食品は、風味を楽しむ程度に使用することが実用的な摂取方法となります。
大豆は、あくまでも工夫によって非常食となる食品となる位置付けです。
大豆を日常の主要なタンパク質源としてみなすことは、自然の法則から逸れることになります(^_−)−☆。