『呼吸と精神の関係』
ストレスの講義でもお伝えしたストレスコーピングについて。
日常で意識することのひとつに「呼吸」をあげました。
呼吸は優れた武道のみならずすべての分野で共通する最重要のポイントです。
その呼吸と脳の関係について興味深い研究が報告されていましたのでご紹介したいと思います(Journal of Neuroscience, 2016; 36 (49): 12448 )。
呼吸のリズム(型)によって、恐怖などの情動の判断や記憶を司る脳の電気信号が変わるという研究です。
呼吸で注目しているのは、吸気・呼気、そして鼻呼吸か口呼吸かという点です。
脳のサイエンスでは、
恐怖などの情動の中枢は「扁桃体」
記憶の中枢として「海馬」
という部位が重要視されています。
いずれも大脳辺縁系といわれる古い脳(本能といわれる)の部分。
大脳辺縁系の反応は、学習などで鍛え上げられる大脳新皮質とは違い、非常に迅速でサバイバルに直結しています。
今回の実験では、恐怖などの表情を判断する、あるいは記憶するのには息を鼻から吸っているときの方が、息を鼻から吐くときより迅速にできたということでした。
この効果は口から息を吸ったり、吐いたりするとなくなったようです。
鼻から息を吸うと、大脳辺縁系全体に電気信号が伝わり、神経細胞が刺激されたとのこと。
わたしたちは、何かパニックに陥るような状況に遭遇したときに、自然と息が速くなりますね。
とくに息を吸う(吸気)の時間が長くなります。
これはサバイバルに直結する大脳辺縁系を刺激して迅速に対応する・・・・
なるほど。
しかし、現代社会ではすぐに命の危険に直結するような状況はむしろ少なく、迅速な反応=感情的な反応になり、あとで後悔すること多しです。
そこで、この実験結果を逆に考えるどうなるでしょうか?
パニック状態を落ち着ける(ニュートラルにする)ためには、つまりすぐに状況に反応せずに、まず落ち着いてより優れた判断を待つためには・・・・
逆の呼吸をすればよいということになりますね。
つまり、ゆっくり口から息を吐くということです。
実際にゆっくり口で息を吐くと全身の筋肉が緩むのが分かります。
鼻から息を吐くよりもより筋肉がリラックスするのも、この理由だったのかとひとりごちしてしまいました(^^♪。
サイエンスが経験・伝統に追い付いてきたよい事例だと思います(#^.^#)。