『乳がん検診の「落とし穴」:日本人女性が直面する危険性』

心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
日本では、40歳以上の女性に対してマンモグラフィを用いた乳がん検診が推奨されています。厚生労働省の指針により、2年に1回の頻度で受診することが基本とされ、視触診は推奨されていません。しかし、この一般的な検診方法が日本人女性にとって思わぬリスクをはらんでいるかもしれないことをご存知でしょうか?
高濃度乳房:日本人女性の特徴が招く誤診リスク
日本人女性(40-49歳)の90%は「高濃度乳房」と呼ばれる乳腺密度が高い体質を持っています。この割合は白人女性と比べて圧倒的に高くいことが分かっています。
参考文献
・Rethinking screening mammography in Japan: next-generation breast cancer screening through breast awareness and supplemental ultrasonography. Breast Cancer 31, 24–30 (2024).
・Breast cancer risk factors and mammographic density among 12518 average-risk women in rural China. BMC Cancer 23, 952 (2023).
なぜ高濃度乳房組織が乳がんの誤診につながるのか?
乳腺組織が多いため乳がんの病変が背景と同じ白色で表示されるため、誤って乳がんと診断されやすい特徴があります。
40代女性では偽陽性率が高く、例えば40代では約60.8%、50代では約51.1%と、年齢が低い群ほど偽陽性が多い傾向があります。偽陽性とは、誤って「乳がん」と診断されることを意味します。
参考文献
・Cumulative Probability of False-Positive Results After 10 Years of Screening With Digital Breast Tomosynthesis vs Digital Mammography. JAMA Netw Open. 2022 Mar 25;5(3):e222440
このような偽陽性の問題のため、近年では、3Dの「乳房デジタルトモシンセシス(Digital Breast Tomosynthesis(DBT))」が推奨されています。この検査では、従来のマンモグラフィー検査よりも偽陽性率が低下しますが、被曝量が飛躍的に増えます。
参考文献
・Radiation dose from digital breast tomosynthesis screening – A comparison with full field digital mammography. J Med Imaging Radiat Sci. 2020 Dec;51(4):599-603.
放射線誘発癌は診断用医療放射線で遭遇する線量および線量率で発生し得るため、従来のマンモグラフィーに加えて3DのDBTでの放射線暴露増加は避けるべきです。
参考文献
・Association of Exposure to Diagnostic Low-Dose Ionizing Radiation With Risk of Cancer Among Youths in South Korea. JAMA Netw Open. 2019;2(9):e1910584.
・Radiation-induced cancer: a modern view. Br J Radiol. 2012 Dec;85(1020):e1166–e1173.
そもそも乳がん死亡率を下げないマンモグラフィ
驚くべきことに、多くの研究でマンモグラフィ検診が乳がんによる死亡率や総死亡率を有意に低下させないことが示されています(パレオ協会ニュースレター『乳がんスクリーニングというデマについて』参照)。特に日本人女性の場合、高濃度乳房による誤診リスクや放射線被曝リスク(発ガン)を考慮すると、現在のスクリーニング方法には再考の余地があります。