『ダイエットを謳う薬の罠 〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
いま話題の“痩せる薬”――その正体をご存じですか?
糖尿病治療薬として広く使われている「メトホルミン」。
最近ではそのダイエット効果が噂され、個人のブログや口コミサイトで体験談が次々と紹介されています。
「脂肪を燃焼してくれる」「痩せるスイッチをオンにする」と期待を込めた言葉が飛び交っていますが、果たしてその真実は?
メトホルミン(商品名:メトグルコ、グリコラン)は、私たちの体内でエネルギーの燃料を「糖」から「脂肪」に切り替える作用を持つ(メタボリック・スイッチと呼びます)と言われています。これにより体に溜まった脂肪を燃やしてくれる……と考えられてきました。
ところが、実際には脂肪燃焼が「体重減少」にはつながらないことが研究で明らかになっています。(AMPK inhibition in health and disease. Crit Rev Biochem Mol Biol. 2010 Aug;45(4):276-95.)。
ではなぜ、長期服用者の中には“げっそり痩せる”人がいるのでしょうか?
その答えは、驚くべき事実にありました――メトホルミンは筋肉を分解し、病的に痩せさせる薬であるということです。(Metformin induces muscle atrophy by transcriptional regulation of myostatin via HDAC6 and FoxO3a. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022 Feb;13(1):605-620.)
筋肉が減少すると、基礎代謝が低下し、逆に脂肪が蓄積しやすくなります。さらに、筋肉の減少はがんを含むさまざまな慢性疾患の病態とも深く関わっています。
この薬のメカニズムは、細胞内のエネルギー産生工場「ミトコンドリア」の働きを抑え、糖の完全燃焼を防ぐことで成り立っています。
つまり、基礎代謝を低下させ、筋肉を崩壊させるリスクを伴うのです。
短期間で脂肪を劇的に減らすような“魔法の薬”は、残念ながら存在しません。
そして、こうした夢のような宣伝には、必ずといっていいほど“見えない代償”が隠されています。
安易な期待で飛びつく前に、本当の「健康」と「ダイエット」を見つめ直し、真実(ファクト、エビデンス)に目を向けてみましょう(^_−)−☆。