『グルテンで脳に炎症が起こる〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
「すべての病は腸に始まる」(ヒポクラテス)
という洞察は、現在になってようやく詳しく解明されるようになりました。
小麦、大麦、ライ麦に含まれるグルテンは、いわゆる「リーキーガット(leaky gut)」を引き起こすことで、最終的にあらゆる慢性病を引き起こすことを拙著『原始人食で病は治る』でお伝えしました。
「リーキーガット」という言葉を日本に輸入した当時は、その言葉自体ほとんど知られてないばかりか、あらゆる慢性病の原因であるというエビデンスを理解している医師も皆無でした(現在でもほとんどの医師は理解していません)。
「リーキーガット(leaky gut)」とは、文字通“小腸に穴が開く”事です。
小腸には、表面にバリアがあり、栄養以外の毒性物質が容易に吸収されて血管の中に入らないようにしています。
この小腸のバリアに穴が開くことによって、消化管の毒性物質がフリーで血管から吸収されるようになります。
フリーで小腸から吸収された毒性物質が全身で炎症を引き起こすのです。
その代表的な毒性物質が「内毒素(エンドトキシン、endotoxin)」とよばれる町内細菌の細胞壁成分です。
リーキーガットからエンドトキシンが吸収されて、全身で炎症を引き起こすことを「内毒素症(endotoxemia,)」と呼びます(Selective increases of bifidobacteria in gut microflora improve high-fat-diet-induced diabetes in mice through a mechanism associated with endotoxaemia. Diabetologia. (2007) 50:2374–83)(Human experimental endotoxemia in modeling the pathophysiology, genomics, and therapeutics of innate immunity in complex cardiometabolic diseases. Arterioscler Thromb Vasc Biol. (2015) 35:525–34)(Experimental endotoxemia induces adipose inflammation and insulin resistance in humans. Diabetes. (2010) 59:172–81)。
リーキーガットからエンドトキシンによって引き起こされる全身の病態は、臨床実験および動物実験のエビデンスからアレルギー、肥満、糖尿病、心臓血管疾患、脂肪肝、炎症性腸炎、関節リウマチ、多発性硬化症、自閉症、統合失調症、うつ病、慢性疲労症候群、新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス感染症、デング熱、脳腫瘍、肝臓がんなど多岐に渡っています(All disease begins in the (leaky) gut: role of zonulin-mediated gut permeability in the pathogenesis of some chronic inflammatory diseases. Version 1. F1000Res. 2020; 9: F1000 Faculty Rev-69)(Leaky Gut Syndrome Is Associated with Endotoxemia and Serum (1→3)-β-D-Glucan in Severe Dengue Infection. Microorganisms. 2021 Nov; 9(11): 2390)(Endotoxins and Non-Alcoholic Fatty Liver Disease. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Oct 29;12:770986)(Role of Metabolic Endotoxemia in Systemic Inflammation and Potential Interventions.Front Immunol. 2021 Jan 11;11:594150)。
最新の実験でも、マウスにグルテンを投与すると、脳に炎症が起こることが示されています(Dietary wheat gluten induces astro‐ and microgliosis in the hypothalamus of male mice. Journal of Neuroendocrinology, 2023; DOI: 10.1111/jne.13326)。
グルテンによって、小腸に穴が開き、そこからエンドトキシンが血液に入って脳に炎症が起きたのです。
このグルテンと同じ作用を持つものが、糖質制限の一形態である高脂肪食(高プーファ食)です。高脂肪食でもリーキーガットから内毒素症になることを拙著『慢性病は現代食から』で詳述しています。
ちなみに、現代医学の「リーキーガットの対症療法」は、すべて病態をさらに悪化させる根本的な間違いを犯しています(The Leaky Gut: Mechanisms, Measurement and Clinical Implications in Humans. Gut. 2019 Aug; 68(8): 1516–1526)。つまり、現代医学の推奨の反対をやれば、リーキーガットは改善するということです。
「日本人は米を食べているからバカで弱い」と発言している、小麦のパンをよく食べる白人がいます。しかし、その発言は、事実・エビデンスや知恵とは何の関係もない“信念・戯言”に過ぎないことは明白ですね(^_−)−☆。