『「砂糖はインシュリン抵抗性を引き起こす」というカラクリ〜リアルサイエンスシリーズ』
心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
砂糖(ショ糖)やハチミツなどの自然の甘味料を摂取していると、糖尿病専門医は摂取を中止するように指示します。
その理由は、前回の記事でもお伝えしたように、「果糖はインシュリン抵抗性を引き起こす」からといいます。
本当でしょうか?
それでは、早速砂糖(ショ糖)の摂取によってインシュリン抵抗性が引き起こされるかを調べた臨床実験を見ていきましょう。
医師たちが参照にしている2021年に報告されたある人体実験では、健康な人にショ糖や遺伝子組み換えコーンシロップ(HFCS)の飲料を投与し、インスリン抵抗性を調べたとされています(Consuming Sucrose- or HFCS-sweetened Beverages Increases Hepatic Lipid and Decreases Insulin Sensitivity in Adults. J Clin Endocrinol Metab. 2021 Jul 15;106(11):3248–3264.)。
しかし、この実験の内容を詳しく見ると、科学的に疑問を抱かざるを得ないポイントが浮かび上がります。
この実験では、16日間にわたり、1日の総摂取カロリーの25%に相当するショ糖やHFCSを3回に分けて投与しました。しかし、なぜか肝心の1日総摂取カロリーが明記されていません。
隠されたカロリー量を計算してみると?
実験プロトコールを基に推定すると、参加者の1日総摂取カロリーは以下のようになります:
- 男性:約 2889 kcal/日
- 女性:約 2320 kcal/日
これらのカロリー量の25%をショ糖で補うと、次のような驚くべき量が与えられています:
- 男性:722 kcal/日(約180.5 g/日)
- 女性:580 kcal/日(約145 g/日)
ショ糖を与えたグループはすべて男性でした。したがって、ショ糖を1日3回に分けて与えた結果、1回あたり約60 g のショ糖を摂取することになります。この量は、日常生活ではほとんどあり得ない「過剰量」です。
非日常的な過剰摂取がもたらす影響
一般的に砂糖(ショ糖)やハチミツなどの果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)の比率がほぼ1:1の自然の甘味料では、フルクトース吸収不全は起こりません(Fructose malabsorption. Molecular and Cellular. Pediatrics. 2016;3:10.)。
ちなみ、ブドウ糖よりも多い果糖量を「過剰の遊離果糖(excess-free-fructose)」という表現を使用します。
この遊離果糖が子供で5g以上、成人で10g以上になるとフルクトース吸収不全が起こると複数の研究で指摘されています(砂糖やハチミツでは遊離果糖はほぼゼロ)(40 years of adding more fructose to high fructose corn syrup than is safe, through the lens of malabsorption and altered gut health-gateways to chronic disease. Nutr J. 2024 Feb 2;23(1):16.)。
しかし、1回に25~50 g以上の過剰なショ糖を摂取すると、小腸での吸収限界を超え、未吸収のショ糖やフルクトースが大腸に到達します。この結果、腸内細菌が異常増殖し、「フルクトース吸収障害」や「エンドトキシン血症」を引き起こすリスクが高まります。これが全身の炎症を誘発し、インスリン抵抗性の発生につながるのです。
つまり、この実験で観察されたインスリン抵抗性は、ショ糖や果糖そのものの問題ではなく、日常生活ではあり得ない過剰量の摂取による腸内環境の悪化が原因だったと考えられます。
日常の摂取量では問題はない
興味深いことに、通常の自然の甘味料(フルーツ、ハチミツなど)を適量摂取した場合、インスリン抵抗性を引き起こすという研究は存在しません。むしろ、多くの研究が示しているのは、自然の甘味料の適切な摂取によって以下のような健康効果が得られることです:
- インスリン感受性の向上
- 血糖値の改善
参考研究
- ハチミツのメタボリックシンドローム対する予防効果(A Review on the Protective Effects of Honey against Metabolic Syndrome, Nutrients, 2018)
- 天然ハチミツの肥満とその関連合併症の効果(J Evid Based Integr Med. 2022 Jan-Dec:27:2515690X221103304.)
- フルーツ摂取と糖尿病リスク低下の関係(Associations Between Fruit Intake and Risk of Diabetes in the AusDiab Cohort. J Clin Endocrinol Metab. 2021 Sep 27;106(10):e4097-e4108.)
- 果物摂取と2型糖尿病リスクの低下(Eating whole fruit, not drinking fruit juice, J Diabetes Investig, 2021)
結論:現代医学の不自然な研究結果の歪みに惑わされないために
「果糖やショ糖がインスリン抵抗性を引き起こす」という認識の多くは、非生理的な投与量を用いた実験データに基づいています(もちろんインスリン抵抗性の真犯人であるプーファの害悪を隠蔽するためです(^_−)−☆)。
しかし、これは現実の生活とはかけ離れています。何度でも繰り返しますが、どんなに健康に良い食べ物でも過剰摂取すれば弊害が現れるのは当然です。
自然の甘味料を適量摂取することで得られるメリットを見逃さないようにしましょう。それが健康な生活を送るための鍵なのです。